預金の低金利が続き、老後の資産形成の必要性が高まる中、以下のような疑問をお持ちの方は多いのではないでしょうか。
- ・貯金と投資の違いとは?
- ・貯金と投資どっちが良いの?
- ・みんなどれくらいの貯金額があるか
- ・お金を増やすには「貯金」それとも「投資」をした方が良いのか
投資は貯金よりリスクが高いですが、その分リターンも大きくなっています。「投資」と聞くと「リスクが高い」「元本割れ」といったネガティブなイメージを抱く方も多いですが、投資と貯金の違いやメリット・デメリットを知る事で手堅い資産形成をする事が出来ます。
投資をするにあたっては「ポートフォリオ」という資産の組み合わせが重要となります。
この記事では、
- ・必要な貯金額はいくら?年代別の平均貯蓄額
- ・貯蓄を増やすために、おすすめの投資
- ・初心者におすすめの積立NISA・投資信託
- ・貯金と投資の割合はどの位が良い?
- ・ポートフォリオって何?
以上についてFPである筆者が積立NISAを始めた体験談を交え、詳しく解説します。
この記事を読む事で、貯金額はどの位必要か、年代別の貯金額、貯金と投資の割合はどの位が良いか、効率的なお金の増やし方について知る事ができます。
更には将来のお金に関する不安に対して具体的な解決策が見つかり、適切な目標を定める事が可能となります。
目次
1.貯金額ってどれくらい必要?
- 「40代だけど貯金が少ない気がする」
- 「同年代の人はどの位貯金しているのだろう?」
と疑問をお持ちの方に、年代別の貯金額の平均値と中央値、平均所得と目標となる貯金額を年齢別にお伝えしていきます。
2019年に厚生労働省が行った「国民生活基礎調査」の結果では、所得金額(収入から経費や所得控除を差し引いた額)別の世帯数は以下の通りになっています。
平均所得金額は552万3千円、中央値は437万円という結果となりました。
なお平均所得金額とは名前の通りすべての所得金額を足して世帯数で割って出た数値ですが、中央値とは所得金額を少ない値から多い値まで順番に並べ、中央に位置する金額を指します。
「自分の所得が全体でどれくらいの位置にあるのか」を知りたい方は中央値、「1世帯当たりいくらもらっているのか?」を知りたい方は平均値を参考にしましょう。
平均所得は「200~300万円未満」が 13.6%、「300~400万円未満」が 12.8%、「100~200万円未満」が 12.6%と多くなっています。
中央値は 437万円で、平均所得金額(552万3 千円)以下の割合は 61.1%となっています。
上記の所得の状況を世帯主の年齢別に表したグラフは以下の通りになっています。
世帯主の年齢階級別に1世帯当たりの平均所得金額は「50~59歳」(50代)が 756万円で最も高く、次いで「40~49歳」(40代)、「30~39歳」(30代)となっており、最も低いのは「29歳以下」の 362万6千円となっています。
各世帯の1人当たりの平均所得金額においても、「50~59歳」が 276万1千円で最も高いです。
50代になると勤続年数を重ねる上に管理職が増えるため、所得が高く現代日本では「働き盛り」となっています。
続いて1世帯当たりの平均貯蓄額と平均借入金額を見ていきましょう。
「60~69歳」が 1461万7千円で最も高く、次いで「70歳以上」が 1233万5千円となっています。1世帯当たり平均借入金額の状況をみると、「30~39歳」が 1071万1千円と最も高く、次いで「40~49歳」が 1002万7千円です。
30代からは住宅ローンや自動車ローンを組む人が増えるため、借入金額が大きくなっています。定年を機にローン完済を設定する世帯が多いため、60代以降は借入額が急激に少なくなり、子供が独立する世帯が多いため貯蓄も増える傾向にあります。
独身、夫婦のみ、子供がいる夫婦、結婚している世帯は片働きか共働きかといった世帯環境で収入や貯蓄額は大きく異なります。
上記の所得と貯蓄の調査結果から、それぞれの世帯の構成により目安となる貯金額を算出した結果が下の表となります。
平均所得と貯蓄額から算出
世帯の構成 | 20代 | 30代 | 40代 | 50代 |
単身世帯 | 180万円 | 300万円 | 600万円 | 900万円 |
夫婦のみ | 200万円 | 550万円 | 700万円 | 1100万円 |
子供がいる夫婦 | 100万円以下 | 300万円 | 500万円 | 700万円 |
※上記の表はあくまで平均所得や貯蓄額、世帯別の平均貯蓄率から計算したおおよその金額である事をご了承ください。
シングル世帯や夫婦のみであれば月に45%程度、子供がいるファミリー世帯は33%程度が給料の中で貯金に回す割合の目安となります。
住んでいる地域や職業等の諸条件で前後しますのでご注意ください。
2.貯蓄を増やすには投資がおすすめ
現在の日本は低金利時代で、普通預金の金利が0.001%、定期預金を1000万円10年預けても0.003%(2020年12月現在)でわずか300円となっています。
貯金を増やすには預金よりも投資がおすすめです。
例えば投資信託や株式投資は定期預金と違い元本割れのリスクがありますが、運用がうまくいけば年利3~4%程度を得られる可能性があるからです。
投資の書類としては個人年金保険や不動産投資、FXや投資信託、株式投資等があります。
個人年金保険は低金利の影響で効率的な資産形成というより「ついお金を使ってしまう」という方向けとなっています。東京オリンピックの影響等で不動産投資市場は活況を迎えており、2020年1~6月期の不動産投資額は首都圏が初の世界1位となりました。
不動産投資は空室リスクや災害リスク等のリスクがありますが、現物への投資は不況に強く高い利回りが見込めます。
コロナ禍で投資信託や株式投資を行う個人投資家が増え、ネット証券の開設数は世界規模で増加しています。
投資を始めて行う方は積立NISAや投資信託の運用、投資に慣れている方は不動産投資や株式投資、FXがおすすめです。
2-1.投資初心者におすすめの積立NISA・投資信託
投資をこれから始める方には積立NISAや投資信託がおすすめです。
積立NISAとは、一定の金融商品を年間40万以内、20年間非課税で運用できる制度です。
一般的に投資で得た売却・配当による利益には20%の税金が課されますが、積立NISA制度では税金がかかりません。月約3万3千円が上限ですが、月1万円からでも投資可能で、初心者に適した簡単で安全性の高い制度となっています。
金融庁が定めた低リスクの投資信託を一定期間で積み立てて購入するため、購入金額が平均値に近くなり(ドルコスト平均法)、失敗する確率が低くなるよう設計されています。
筆者は10月から積立NISAを始め、アメリカや世界の株式中心の投資信託を積立で購入した所、株高の影響もあり11月末現在+10%となっています。
また多くの証券会社ではNISA制度とは別に、積立で投資信託が購入可能です。
既にNISA制度を利用して非課税枠が無い方は積立での投資信託購入を検討してみましょう。
2-2.中級者は不動産投資・株式投資で資産形成を
既に投資を行っている中級者の方は、株式投資や不動産投資を検討してみましょう。
不動産投資は「レバレッジ効果」があり、例えば購入費用3000万円分の物件を「頭金200万円+諸費用100万円」で購入、残りはローンを組んだ場合、300万円の初期投資に対して3000万円に対するリターンが得られます。
株式投資は2020年11月現在、米国・日本共に株高の状態で株式市場に参入するチャンスと言えるでしょう。
新型コロナの影響で株価が下がった鉄道会社や不動産会社も回復の兆しを見せています。例えばJR東日本やオリックスは株主優待や配当金で人気があり、株価も上昇傾向にあります。ただし株式投資にも一定のリスクがありますので、上記の2銘柄が必ず儲かるわけではないことをご承知下さい。あくまで投資は自己判断でお願いいたします。
なお筆者は米国株投資を行っていますが、日本株投資よりリスクが高いものの得られるリターンが高く、市場規模も大きいです。
日本の企業より株主への還元意識が高いので高配当の企業が多い事も魅力の一つです。
米国株への投資は、毎日円の価値が変動する事による為替リスクが発生します。また日本の株式市場と違い一日の値幅制限が無いため株価が一気に半額になることもあります。
ハイリスク・ハイリターンの投資となりますのでマネー雑誌や書籍、インターネット等で情報収集を行ってから始めましょう。
3.貯蓄と投資の割合はどれくらいが良い?ポートフォリオの考え方
「貯金だけで老後のお金が貯まるだろうか」と不安を感じる方は多いでしょう。
しかし
- 「月にいくら投資に回せばよい?」
- 「ポートフォリオという言葉を聞いたけど初心者でもポートフォリオについて考えたほうが良い?」
と言う疑問をお持ちの方も多いようです。
- ポートフォリオとは例えば預貯金・現金等の安全資産と株式や投資信託等元本割れのリスクがあるリスク資産の保有率を指します。
ポートフォリオは年齢や世帯構成、職業等により考え方が変わってきます。
年齢が若いほど投資で失敗してもこれから稼いで取り戻せる可能性が高くなり、シングル世帯は教育費や家族を養うためのお金が不要であるため高リスクの投資が可能です。
また、資格を持ち安定した職業の方もリスクが高い投資を行い、たとえ損失があっても本業の収入で補うことができます。
逆にファミリー世帯で40代以上の方は低リスクの投資を行ったほうが良いでしょう。
年齢、職業、世帯等を考慮したリスクの許容度は以下の通りになります。
高リスクも可能 | 低リスクが無難 | |
年齢 | 20~30代 | 40代以上 |
職業 | 会社員や士師業等 | 自営業者等収入が安定しない方 |
世帯 | シングル世帯 | ファミリー世帯 |
性格 | 大胆 | 慎重 |
ちなみに筆者は30代でシングル世帯なので高リスクの米国株投資を行っています。ただし性格的に慎重で自営業者のため、「安全資産8:リスク資産2」でポートフォリオを組み、積立NISAも同時に行っています。
まずは上記の表を参考に投資方法とポートフォリオを決めておきましょう。
例えば40代のファミリー世帯会社員の方であれば、積立NISAや投資信託を月収の2、3割から行い、20代のシングル世帯で会社員の方は株式投資を月収の4割程度から始める等ポートフォリオを定めておくことで、安心して投資を行うことができます。
まずは収入から生活費(ローンや債務がある場合は返済額を含む)を差し引き、残ったお金は投資と貯蓄に回します。投資と貯蓄の割合は、年代や職業等上記の表を参考に決めていきましょう。
まとめ
1.平均貯金額は年収や年齢等によって異なり中央値とは差がある
2.貯蓄を増やすためには投資がおすすめ
3.初心者は積立NISAや投資信託、中級者は不動産投資や株式投資
4.年齢、世帯、職業等に合ったポートフォリオを作る
20代、30代、40代と年代に合った目標貯蓄額とポートフォリオを組み、計画的に資産形成を行いましょう。投資を行う事で経済や政治にも目が向き、社会人として視野が広がります。投資で結果が出ると日々の生活にも余裕が出てきますので、初心者の方は少額の投資から検討してみましょう。