不動産投資や土地活用、相続税などについて調べていると、「路線価」という言葉を見かけると思います。しかし「路線価」の意味を100%理解し、物件探しや土地や相続税評価に生かせている人は、実は少数派なのではないでしょうか。
今この文章を読まれているあなたも、以下のような疑問をお持ちだと思います。
- ・路線価という言葉は聞いたことがあるけど、どんな場面で使うものなの?
- ・路線価図の見方は?
- ・路線価の計算方法は?
路線価は不動産の売買、相続において非常に重要な指標です。
しかし、専門的な言葉で解説されることが多いため、理解に苦しんでいる人も多いと思います。
そこでこの記事では、「とにかく路線価をわかりやすく解説する」をテーマに
- ・そもそも路線価とは?
- ・路線価が必要になるのはいつ?
- ・路線価の調べ方は?
- ・実際に路線価図を調べてみよう!
- ・路線価図の見方
- ・路線価図をもとにした計算シミュレーション
- ・路線価を計算する際の注意点
- ・路線価の計算で困ったときはどうする?
について徹底的にわかりやすく解説します。
この記事を読むことで、専門知識がまったくない方でも路線価の知識を身につけることができます。また、計算方法やその注意点も解説しているので、身につけた知識を不動産の売買、相続において活用できるようになります。
本記事が「路線価について正しい知識を身につけ、実践で活用したい!」という方のお役に立つことができれば幸いです。
目次
1.そもそも路線価とは?
では、これから図解で路線価を解説していきます。
1-1.路線価とは「道路に面する宅地の1m2あたりの価格」
路線価とは、「道路に面する宅地の1m2あたりの価格」のこと。
図で表すと、下のようなイメージです。
ここで簡単に計算してみましょう(細かい条件は除いています)。
路線価が10万円、100m2の土地があったら価格はどうなるでしょう。
「10万円× 100 = 1000万円」となります。
では、路線価が5万円、50m2の土地があったら価格はどうでしょう。
「5万円× 50 = 250万円」ですね。
いかがですか? 路線価を使った計算方法は詳しく後述しますが、とても簡単だと思いませんか?
「路線価って難しそう……」というイメージをまずは捨てることから始めましょう!
1-2.宅地とは「建物が建っている、あるいは建てられる土地」のこと
ちなみに
- 「宅地って? 普通の土地じゃないの?」
という疑問を持たれた人もいると思います。
実は、一口に「土地」といっても、「田」「畑」「山林」「公衆用道路」など用途別に区分されています。その数は全23種類あり、「宅地」はその一つです。
宅地にもいくつか種類があるのですが、ここではシンプルに「建物が建っている、あるいは建てられる土地」と考えてください。
2.路線価が必要になるのはいつ?
さて、路線価が何かがわかったところで、次は「路線価は何に使われるのか?」ということを見ていきましょう。
2-1.路線価は2種類ある
路線価が使われるシーンは主に2つです。
- 相続税・贈与税を算出するとき
- 固定資産税を算出するとき
このため、(1)は「相続税路線価」、(2)は「固定資産税路線価」と呼ばれています。
相続税路線価は「1年に1度、国税庁から」、固定資産税路線価は「3年に1度、各市町村から(東京都の場合は都)」公表されます。
ちなみに、単に「路線価」という場合、国税庁の「相続税路線価」を指します。
路線価が公表されている理由は、主に税務申告する側とそれを受ける税務署が、いちいち土地価格の鑑定をしなくてもスムーズに試算できるようにするため、といえます。
例えば、「相続が発生したので相続税を計算しなければならないが、この土地の価格はいくらなんだろう」と一つひとつ鑑定をしていたらキリがありません。そのため、相続税や贈与税、固定資産税を算出するときの指標として路線価を公表しているのです。
なお、相続税路線価をもとにした土地の評価方法は以下の記事で詳しく解説しています。
2-2.公示地価とは?
路線価は、他の土地評価額である「公示地価」や「取引価格(実際に売買された価格)」などを参考にして決まっています。
公示地価とは、国土交通省が毎年公表している「標準地1m2当たりの価格」のことで、土地取引や金融機関の担保評価に活用されています。「標準地」と書くと難しく聞こえますが、「その地域の中で良くも悪くもない普通の土地」と考えれば問題ありません。
よく「銀座の鳩居堂前が日本一高い」というニュースが報道されますが、これは「路線価」のことを指します。同じように、「銀座の山野楽器が日本一高い」という報道もありますが、これは「公示地価」となります。
銀座の鳩居堂前の路線価は1m2当たり4592万円、山野楽器の公示地価は1m2当たり5770万円(ともに2020年)。このように、同じ「日本一」でも調査主体や価格の決め方が異なるため、公表される価格も変わってくるのです。
本記事では公示地価の解説は割愛しますが、
- ・路線価は、相続税・贈与税、固定資産税を算出するときに使われる
- ・公示地価は、土地取引や金融機関の担保評価に使われる
とシンプルに考えるのがいいでしょう。
2-3.路線価はどうやって決まっている?
路線価は、公示地価や取引実績、多くの専門家の意見で決定される指標のため、相場を知る一つの指標になります。路線価を毎年確認することで、数年間の地価変動の推移を知ることができます。
相続税路線価、固定資産税路線価はどちらも公示地価と連動しており、相続税路線価は公示地価の8割程度、固定資産税路線価は公示地価の7割程度となっています。実際の不動産市場での取引価格とは異なりますので、注意が必要です。
3.路線価の調べ方は?
路線価を調べる方法は、主に以下の5つの方法があります。
- 国税庁のホームページにある「路線価図」を利用する
→これが最も一般的といえます。 - 一般財団法人資産評価システム研究センターの「全国地価マップ」を利用する
→「路線価図」よりも簡単に、かつ見やすく路線価を調べることができます。ただ、国や地方公共団体が一般に公開している宅地の価格に関し、評価センターが独自に収集したものになりますので、情報が正確ではない可能性もゼロではありません。 - 民間団体提供のデータベースを利用する
→例えば、株式会社ゼンリンが運営している「路線価データベース」などがあります。「全国地価マップ」と同様、見やすいサイトなので路線価図が使いづらいと感じる場合には、こういったサイトをうまく利用して調べるのもいいでしょう。 - 「国立国会図書館」を利用する
→国税庁が公表している路線価図よりも、古い時代の路線価を知りたい場合に活用できます。 - 国税局や国税事務所、税務署に足を運び、直接路線価図を確認する
この記事でも「路線価の調べ方についてご紹介しています。併せてお読みください。
次からは、「路線価図」の詳しい見方を紹介しましょう。
4.実際に路線価図を調べてみよう!
国税庁のホームページでは、常に最新の路線価が確認できるようになっています。
では早速、路線価図を使った路線価の調べ方を見ていきましょう。
4-1.【STEP1】国税庁のHPにアクセスします
まずは以下のサイトにアクセスしましょう。トップページに飛び、最新の情報(本記事では「令和2年分」)が表示されます。
4-2.【STEP2】地図もしくは左の地域選択から、都道府県をクリックします
4-3.【STEP3】「路線価図」をクリックします
4-4.【STEP4】調べたい「市区町村」をクリックします
4-5.【STEP5】町名(番地)から路線価図ページ番号をクリックします
4-6.【STEP6】調べたい場所が見つかったら操作は完了!
さて、これで調べたい場所の路線価図を表示できたはずです。
実際に操作してみればわかると思いますが、とても簡単なので初めて利用する人でもすぐに調べることができるでしょう。
ただ、この路線価図を見ても、さまざまな記号や数字、アルファベットがあり、どのように見たらいいかわからないと思います。
そこで、次項では路線価図に書かれているこれらの意味について紹介します。
5.路線価図の見方
路線価図を見るうえでは、いくつか知っておくべきことがあります。それが「数字」「アルファベット」「記号」の意味です。
ここでは、以下の路線価図をもとに説明していきましょう。
何も知らないままこの図を見ると、「?」と思うはずです。でも、安心してください。「数字」「アルファベット」「記号」の意味を押さえるだけで路線価図を自分でチェックできるようになります。
5-1.数字は「路線価」を表す
まず覚えてほしいのは、「150C」や「220C」などの「数字」の部分は路線価を表しているということです。
この数字は1000円単位の表記なので、実際に計算するときは路線価図の数字に1000をかけましょう。
例えば、「150C」の場合、「150×1000=15万円」ということです。「220C」だと、「220×1000=22万円」です。簡単ですね。
ちなみに、すでに書いたように「路線価=道路に面する宅地の1m2あたりの価格」です。したがって、仮に「150C」で土地面積が100m2の場合、「15万円(150Cの路線価)×100=1500万円」がその土地における相続税や贈与税を算出する基準というわけです。
※ただし、今回の計算例では整形地(きれいな四角形)が前提です。土地の間口が狭すぎたり、いびつな形だったりする場合は「補正」といい、路線価を減額しなければなりません。補正については後述します。
5-2.アルファベットは「借地権の割合」を表す
路線価図には、「150C」など「数字+アルファベット」で表記されています。アルファベットは、「借地権の割合」を示しています。
借地権を簡単に説明すると、「土地を借り、その土地に家を建てるなどして利用できる権利」のこと。
例えば、土地を所有するAさんがBさんに「家を建てるなどして土地を利用してもいいですよ」という権利(借地権)を渡します。その代わりBさんは、土地を利用させてもらうためにAさんに地代を支払います。Bさんはその土地に家を建てたりできるのですが、あくまで土地の持ち主(所有権)はAさんのままです。Bさんは「土地を利用できる権利をAさんから地代という形で借りている」に過ぎないわけです。
さて、この借地権、実は相続税や贈与税の対象となります。つまり、相続・贈与した土地に借地権が付いていれば、土地だけでなく借地権に対しても相続税や贈与税が課税されるということです。
とはいえ、借地権はあくまで「土地を借り、その土地に家を建てるなどして利用できる権利」なので、土地をそのまま相続・贈与したときよりも相続税や贈与税を安くしなければ割に合いません。
そこでアルファベットで借地権の割合を設定しているのです。アルファベットと各割合は以下のとおりとなっています。詳しい計算方法は6章で説明します。
記号 | 割合 |
A | 90% |
B | 80% |
C | 70% |
D | 60% |
E | 50% |
F | 40% |
G | 30% |
5-3.記号は「地区」
路線価図には、二重線の上に四角や丸などが書かれた図形が存在します。これはビル街や繁華街などの「地区」を表しています。路線価図を表示すると、上部に以下の図がまとめられていると思います。これらに当てはまらない場合、通常の住宅地区と考えます。
6.路線価図をもとにした計算シミュレーション
では、路線価図をもとに実際に計算してみましょう。
6-1.基本となる計算式を覚える
計算の前に、知っておいていただきたいのが路線価の計算式です。
- 補正を行った路線価 × 土地の面積(m2)
- ※借地権が設定されている場合、
補正を行った路線価 × 土地の面積(m2)×借地権の割合(詳しくは5-2の表)
ここで追加の説明が必要なのが「補正」です。
補正とは、土地の形状や周囲の条件に応じて路線価を減額したり、増額したりすること。例えば、きれいな整形地だったら価値は高くなりますが、間口が狭すぎたり、いびつな形だったりすると価値が下がります。これはみなさんもイメージできると思います。
路線価が減額される要因としては、以下の5種類が挙げられます。
補正の種類 | 内容 |
奥行価格補正 | 宅地の奥行が短い・長い |
不整形地補正 | 宅地がいびつな形状をしている |
間口狭小補正 | 用途に対しての間口が狭い |
奥行長大補正 | 間口に対しての奥行が長い |
がけ地補正 | 宅地にがけがある |
これとは別に、賃貸の敷地や貸宅地の場合、借主の権利に当たる部分を「減額」して価格を計算します。自用地(自分で使う土地)であれば、減額はありません。
一方、路線価が増額される要因としては、複数の道路に面しているなど「利用価値が高い」ケースが該当します。
6-2.実際に計算してみよう!
計算式がわかったところで、実際に路線価図をもとに計算してみましょう。条件は以下のとおりです。
- ・土地の種類:自用地
- ・地区 :普通住宅地区
- ・路線価、借地権の割合:220C
- ・土地の面積:100m2(10m×10m)
これを「補正を行った路線価 × 土地の面積(m2)」に当てはめて考えてみます。
まず、「補正」については今回では特になしとします。
したがって、「22万円×100m2」で自用地の価額は「2200万円」となります。
さらに、このケースでは「C」というアルファベットが付いています。つまり借地権が付いています。割合は5-2の表にあるとおり、Cなので「70%」です。
したがって、「2200万円×70%」で「1540万円」です。これがこのケースにおける路線価を用いた計算結果となります。
7.路線価を計算する際の注意点
ここでは、路線価図を使って計算を行う際の注意点を紹介します。
7-1.路線価が設定されていない土地もある
路線価図を見て、数字+アルファベットの記載がないケースもあります。こうした場合、路線価が設定されていないということになります。
もし路線価の表示がなければ、固定資産税路線価に倍率を掛けて路線価を算出することで代わりを担います。この算出方法を「倍率方式」と呼びます。
- 【倍率方式の計算式】
固定資産税路線価×倍率
固定資産税路線価は、前に書いたように3年に1度、各市町村から(東京都の場合は都)公表しています。「全国地価マップ」で確認できます。
倍率は、国税庁HPの「路線価図・評価倍率表」で調べたい土地がある都道府県をクリックし、そこから投下倍率表のページを開いてチェックしましょう。
7-2.補正によって計算が複雑になることも
路線価を正しく算出するうえで、最も難しいのが「補正」です。土地の形状、周囲の条件などによって補正が発生することは前にも書きましたが、土地によってはいくつも補正をかけて計算しなければなりません。その場合、計算は複雑になります。
8.路線価の計算で困ったときはどうする?
路線価を用いた計算方法を紹介してきましたが、ゼロから自分で計算することは、土地によっては形状や特徴などを把握し補正率を考慮する必要があるため、ややハードルが高いといえます。
自分で土地の価値を正しく算出するのが困難だと感じた場合は、税理士や不動産鑑定士などのプロに相談したり、もしくは不動産会社に査定してもらったりするなど別の方法で価値を調べることもおすすめです。
まとめ
1. 路線価には「相続税路線価」と「固定資産税路線価」の2種類がある。基本的には「相続税路線価」、つまり相続税・贈与税を算出するときに利用される
2. 路線価の調べ方は国税庁HPの「路線価図」が一般的。ただ、表示が見づらい、操作がしにくいなどの声もあるため、そうした場合は「全国地価マップ」や民間サイトを利用するのもいい
3. 路線価の計算方法で最も難しいのが「補正」。自分で調べることも不可能ではないが、専門家に任せたほうがスムーズで確実ともいえる
いかがでしたか。不動産を購入するとき、物件価格や立地、利回りなどで判断しがちですが、特に子どもや孫に相続させたいと考えるのであれば、路線価も判断材料の一つにするべきです。
ぜひこの機会に路線価の知識を深めていただければと思います。
以下の記事では、土地探しのコツをチェックリストにしてまとめております。こちらもあわせてお読みいただき、土地探しで失敗しないためのポイントを確認しておきましょう。
- この記事を書いた人
-
山本ゆりえ
ライター・編集者・大家。
木造アパート4棟、重鉄マンション1棟、区分マンション2戸を取得(3棟・区分2戸は売却済)。転貸のレンタルスペース1戸運営中。これまで購入した自宅は3戸。不動産投資の分野を得意とし、これまで関わった不動産関連書籍は100冊を超える。
執筆している記事:MONEY PLUS、 bizSPA!フレッシュ