
生前贈与とは、農地や宅地などの土地を所有者が亡くなったときに相続により受け継ぐのではなく生前に受け継ぐという方法です。
生前贈与は、節税効果という点で相続とどちらが有利なのかよく比較されますが、生前贈与にはメリットとデメリットの両方を伴うため、特徴をよく理解してから選択することが重要です
この記事では、土地の生前贈与のメリットとデメリット、土地の生前贈与に向いているケースを解説します。
土地所有者で扱いについて悩んでいるという人は参考にしてください。
目次
土地を生前贈与するメリット
土地を生前贈与するメリットとして、以下の3つが挙げられます。
・贈与税の配偶者控除の特例を利用すれば一定額まで非課税になる
・贈与先を自由に選択できる
・贈与するタイミングを自由に決定できる
それぞれのメリットを詳しく説明していきます。
●贈与税の配偶者控除の特例を利用すれば一定額まで非課税になる
贈与税の配偶者控除の特例とは、居住用不動産2,000万円までの贈与税が非課税となる制度です。
しかし、特例を全員利用できるというわけではありません。婚姻20年以上の夫婦間で贈与をした場合に限られている点に注意が必要です。
基礎控除額の110万円を含めると2,110万円までが非課税となるので覚えておきましょう。
●贈与先を自由に選択できる
相続の場合には、遺言書を作成していてもその通りになるとは限りません。しかし、生前贈与であれば、自分の指定した人物に財産を譲ることが可能です。
贈与者や受贈者を指定し財産を直接譲渡するため、確実に財産を特定の人物に譲渡したい場合には、遺言書を作成するより生前贈与を選択したほうが良いでしょう。
●贈与するタイミングを自由に決定できる
相続は発生のタイミングを自由に選べません。しかし、生前贈与の場合には自由に贈与するタイミングを決めることが可能です。
例えば、将来地価が上昇した場合は、相続人は相続時の地価を基準とした相続税評価額で相続税を納めなくてはなりません。
つまり、相続人の税額負担が大きくなるということです。
しかし、生前贈与は贈与時の地価を基準として贈与税額を計算します。
将来価格が上昇しても差額を納める必要はありません。
立地条件が良く、将来地価が上昇する可能性が高い不動産を所有している場合は、譲与を選ぶことをおすすめします。
土地を生前贈与するデメリット
土地を生前贈与することには以下のようなデメリットも伴うため、総合的に判断することが大切です。
・贈与のほうが相続よりも多くの費用がかかる
・相続税よりも贈与税のほうが税率が高く設定されている
・相続開始前3年以内の贈与は相続として扱われる
それぞれのデメリットについて詳しく解説していきます。
●贈与のほうが相続よりも多くの費用がかかる
贈与を選択した場合も相続と同様、不動産取得税や登録免許税などが発生します。
相続は不動産取得税が非課税、登録免許税は税率が低くなりますが、贈与には特に目立った恩恵はありません。
相続と贈与を比較すると相続のほうが費用負担を軽減できるということを覚えておきましょう。
●相続税よりも贈与税のほうが税率が高く設定されている
相続税と贈与税の税率を比較すると以下の通りです。
相続税 | 贈与税 | ||
課税価格 |
税率 | 課税財産額※括弧内は特例贈与財産 | 税率 |
1,000万円以下 | 10% | 200万円以下(200万円以下) | 10% |
3,000万円以下 | 15% | 300万円以下(400万円以下) | 15% |
5,000万円以下 | 20% | 400万円以下(600万円以下) | 20% |
1億円以下 | 30% | 600万円以下(1,000万円以下) | 30% |
2億円以下 | 40% | 1,000万円以下(1,500万円以下) | 40% |
3億円以下 | 45% | 1,500万円以下(3,000万円以下) | 45% |
6億円以下 | 50% | 3,000万円以下(4,500万円以下) | 50% |
6億円超 | 55% | 3,000万円超(4,500万円超) | 55% |
特例贈与財産とは、贈与を受けた年の1月1日時点において20歳以上の子や孫などの直系卑属に贈与された財産です。
それ以外の財産は一般贈与財産として扱われます。
特例贈与財産がいくら税率の優遇を受けられているといっても、相続税と比較すると税率の高さは一目瞭然です。
相続時精算課税制度という累積で2,500万円の非課税枠、非課税枠を超えた金額に対して一律で20%の課税、最終的に相続財産に贈与財産を合算して相続税を算出する特別控除が適用できれば、税負担を軽減できる可能性があります。
しかし、得かどうかの判断は容易ではありません。
そのため、どちらを選ぶべきかよく分からないという人は、税理士への相談をおすすめします。
●相続開始前3年以内の贈与は相続として扱われる
節税効果を期待して生前贈与を選択しても3年以内に死亡した場合、相続税の課税対象となる点に注意が必要です。
つまり、贈与した財産の価格(価額)を相続財産に加算するということです。
暦年課税制度を利用した贈与についても相続財産に加算されるという計算方法が採用されているため、暦年課税制度の利用を検討している人は早めに利用しましょう。
土地の生前贈与に向いているケース
土地の生前贈与は土地の所有者全員にメリットのある選択肢とはいえません。
選択してから後悔しても手遅れなので、土地の生前贈与に向いているケースを事前に知った上で贈与を選択することが重要です。
土地の生前贈与に向いているケースとして、以下の2つが挙げられます。
・将来値上がりする可能性が高い土地を所有している
・特定の人物に土地を贈与したいと考えている
それぞれのケースを詳しく紹介していきます。
●将来値上がりする可能性が高い土地を所有している
生前贈与は将来的な地価上昇の影響を受けません。そのため、地価が上昇する可能性が高い場合は、相続よりも贈与を選んだほうが節税効果が期待できます。
しかし、必ずしも得をするとは限りません。相続では「3,000万円+600万円×法定相続人の数」という基礎控除が適用されるため、控除額によっては贈与よりも相続のほうが得をするケースも多いです。
どちらが得なのかがよく分からない場合には、独断で決めるのではなく、税理士や不動産会社などの各種専門家に相談しながら決めましょう。
●特定の人物に土地を贈与したいと考えている
例えば、長男に土地を贈与したいと考えていても、相続時に必ず実現できるとは限りません。
その理由は、遺言書を作成しても従わなければならないというルールがないためです。
生前贈与であれば、特定の人物に確実に土地を譲ることが可能です。
ただし、特定の人物に贈与することに反発する人物がいる可能性もあるため、全員でよく話し合ってから生前贈与を選択しましょう。
不要な土地の場合は売却も選択肢の1つ
所有しているのが不要な土地で、将来的に誰も使用する予定が全くない土地の場合は、売却するのも選択肢の1つです。
その理由は、所有中の固定資産税や都市計画税などの無駄な税金を抑えられる、贈与や相続におけるトラブルを回避できるためです。
売却を選択した場合、不動産会社に仲介を依頼するという一般的な売却方法を想像した人が多いと思いますが、売却は速やかに成約に至るとは限りません。
そのため、速やかな現金化を希望している人は不動産買取業者に買い取ってもらうことをおすすめします。
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