
読まなくなった本や着なくなった洋服をリサイクルショップに持ち込んだことがある人であれば、「買ったときの値段よりずっと査定額が低かった」という経験をしたことがあるかもしれません。
一度でも使っていたものである以上、ものは傷むため、その分が査定額に反映されます。
一戸建てやマンションなどの不動産も同じで、人が住めばやはり傷むのです。
不動産を売却する際は「人が住み続けて傷んだ分」を減価償却として考える必要があります。
不動産の減価償却とは
一戸建て、マンションなどの不動産も、使っていくうちに傷むため、資産価値が減少していきます。
そこで、資産価値を減少させていく手続き=減価償却を行わないといけません。
●減価償却の概要
減価償却とは、耐用年数に基づく経年劣化による資産価値の減少です。
つまり「建てられてから年数が経ったり、人が住んだりしたことで、価値が目減りした分」と考えましょう。
なお、不動産において減価償却を行う必要があるのは、経年劣化が生じる建物のみです。
土地は経年劣化が生じないため、減価償却を行う必要はありません。
なお、減価償却を行う際に用いる耐用年数には「物理的耐用年数・経済的耐用年数・機能的耐用年数・法定耐用年数」の4つがあります。
・物理的耐用年数
物理的耐用年数とは、建物が劣化し、構造物としてのしくみ・品質を維持できなくなる年数です。
経年劣化の進行で建物が傷み切ってしまい、実際に使えなくなるまでにかかる年数と考えましょう。
なお、建物で使用する資材の品質は日々向上しています。
そのため、建物の物理的耐用年数も長くなっているのが実情です。
・経済的耐用年数
経済的耐用年数とは、建物が経済的な価値を保つ年数を指します。
つまり、無価値(評価額がゼロ円)になるまでかかるまでの年数です。
・機能的耐用年数
機能的耐用年数とは、技術革新や社会的な要求の変化により陳腐化する年数を指します。
砕けた言い方ですが「時代遅れになるまでの年数」と考えましょう。
・法定耐用年数
法定耐用年数とは、税法において固定資産の減価償却費を算出する際に用いる年数のことです。
詳しくは後述しますが、固定資産の種類によっても細かく定められています。
●構造別の法定耐用年数
建物の場合、法定耐用年数は建物の構造によって決まる仕組みです。
新築の建物の場合は、以下のようになっています。
木造:22年
鉄骨鉄筋コンクリート造、鉄筋コンクリート造:47年
鉄骨造:骨格材の肉厚4 mm超34年,3mm超4mm以下27年、3mm以下19年
一方、中古物件の場合「(法定耐用年数-経過年数)+経過年数×20%」という計算式で耐用年数を求め、減価償却を行う仕組みです。
また、耐用年数を過ぎている場合は「法定耐用年数×20%」を耐用年数とし、減価償却を行います。
不動産売却と減価償却の関係
中古マンション・一戸建てなどを売却すると、税法上は譲渡所得として扱われます。
そして、譲渡所得を計算するにあたっては減価償却費も考慮しなくてはいけません。
さまざまな計算式を用いて、不動産売却と減価償却の関係をみてみましょう。
●譲渡所得は「売却金額-(取得費+譲渡費用)」で算出
不動産を売却して利益が出た場合、譲渡所得税を納めなくてはいけません。
そして、前段階として譲渡所得を計算する必要があります。この際に使うのが「売却金額-(取得費+譲渡費用)」という計算式です。
まず、取得費は「土地購入価格+建物取得費」で計算します。
この際の建物取得費は「建物購入価額-減価償却費」と考えましょう。
また、減価償却費は「建物購入価格×0.9×償却率×経過年数」で計算可能です。
なお、経過年数で6ヵ月以上の端数が出ていた場合は、1年に繰り上げて減価償却費を計算します。
また、非業務用の建物(住宅用の一戸建て、マンションなど)の償却率は以下の通りです。
木造 | 0.031 |
木造モルタル | 0.034 |
(鉄骨)鉄筋コンクリート | 0.015 |
金属造①(軽量鉄骨造のうち骨格材の肉厚が3ミリメートル以下の建物) | 0.036 |
金属造②(軽量鉄骨造のうち骨格材の肉厚が3ミリメートル超4ミリメートル以下の建物) | 0.025 |
引用元:国税庁「タックスアンサー No.3261 建物の取得費の計算」
●譲渡所得がプラスの場合は譲渡所得税が課される
譲渡所得がプラスになった場合、その部分にも税金(譲渡所得税)がかかります。
計算に当たって用いる税率は、建物の所有期間によって異なるので、違いを確認しましょう。
・短期譲渡所得税
建物を売却した年の1月1日時点で所有期間が5年以下だった場合は、短期譲渡所得税として扱われます。
税率は39.63%(=所得税30.63%+住民税9%、2037年までは復興特別所得税として2.1%を加算)です。
・長期譲渡所得税
一方、建物を売却した年の1月1日時点で所有期間が5年超の場合、長期譲渡所得税として扱われます。
税率は20.315%(=所得税15.315%+住民税5%、2037年までは復興特別所得税として2.1%を加算)です。
税率が20%近く違うため、税額を減らすという意味では、所有期間が5年を超えてから売却するほうが良いでしょう。
不動産売却時に押さえておきたいポイント
不動産を売却する際には、様々な税制上の優遇策も利用できます。
代表的なものを知っておきましょう。
●3,000万円特別控除を利用できる
3,000万円特別控除とは、譲渡所得から3,000万円を控除できる制度です。
つまり、3,000万円以上の売却益が生じなければ、譲渡所得税もゼロ円になります。
なお、「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」が正式な名前です。
自分が住んでいる家屋を売る場合はもちろん、過去に住んでいた家屋でも住まなくなった日から一定期間内であればこの特例の適用を受けることが可能です。
●マイホームを売ったときの軽減税率の特例を利用できる可能性がある
マイホーム(居住用財産)のうち、その年の1月1日時点で所有期間が10年を超えていたものを売却した場合は、軽減税率の適用が受けられます。
適用される税率は、売却益(課税長期譲渡所得金額)が6,000万円以下の部分と、6,000万円超の部分とで扱いが違うので押さえておきましょう。
6,000万円以下の部分:所得税10.21%+住民税4%=14.21%
6,000万円超の部分:15.315%+住民税5%=20.315%
売却益が多額になり、税金も高くなりそうなら、敢えて所有期間が10年を超えた時点で売却するのも選択肢の1つです。
減価償却の仕組みを理解して不動産の売却を
不動産を売却した際、利益が出れば税金を支払わなくてはいけません。
そして、利益を計算する際には減価償却費も関係してきます。
いわば「正しい減価償却費を計上すること」が、不動産売却による正確な利益、および税額を計算することにつながるのです。
しかし、実際にやってみないとわからないことも多いかもしれません。
減価償却の点も含め「不動産を売りたいけど、どうすれば良いかわからない」と悩んでいる人は、ソクガイ.jpに相談してアドバイスを受けると良いでしょう。
「不動産投資の業界を誰もが挑戦できるクリアな業界に変える!」をモットーに、2016年6月、不動産投資家が集まって立ち上げた会社です。設立以降、不動産投資家による不動産投資家の為の投資コンサルティングサービスを複数展開すると共に、投資用物件の売買も行っています。宅地建物取引士、賃貸経営管理士、AFP認定者等、不動産から資産運用まであらゆる問題を解決する専門家が記事を監修、校閲しています。不動産を売りたい方、買いたい方、不動産にまつわる様々な疑問・問題を抱えている方へ役立つ情報をお届けします。